ぼくはひたすら 荒い息をしながら この道を走っていた

両目を閉じて 走る 両耳を塞いで 走る まっすぐ前に向かって 走る 決して振り返らずに 走る

ぼくの後ろに 黒い いびつな縊死体がぼくを追いかけている 狂気に溢れる笑顔と 希望に満ちた眼差しと 甲高い叫び声と 力強い両腕をした 縊死体が ぼくを追いかけている

ぼくに縊死体は見えない でも縊死体は確かにそこにいる ぼくは縊死体から目を逸らす でも縊死体は鋭い目線でぼくを見つめている

抗えない疲れがぼくを襲う そのたびに 縊死体が耳元によじってくる ぼくの片手がそれを振りほどこうとし もう片方の手が それを掴もうとした

ぼくは自分の首を掻きむしった 肌が破り 血が溢れ出した ひたすらそれを見ている縊死体は 半分の顔が泣き もう半分に笑みがほころんだ